Drifter by KIRINJI(キリンジ)
初の解釈投稿となります。
一発目には何を投稿しようかな、、、と悩んだ結果、私が個人的に最も救われた、というか元気をくれた曲を紹介しようと思います。
キリンジのDrifterです。
キリンジは1996年から活動をはじめ、1998年には1stアルバム
「ペイパードライヴァーズミュージック」
をリリースし、メジャーデビューしました。
当時のアルバムに収録されていた曲はどれも歌詞が難解…そして曲の展開もかなり複雑で、何度も聞きたくなる中毒性を持ちます。
そして彼らの代表曲ともいえる「エイリアンズ」が収録されたアルバム
「3」
はファンの間でも名盤といわれるほど完成度の高いものとなりました。
Drifterはその次にリリースされた4thアルバム
「fine」
に収録されています。
堀込高樹さんが作詞作曲を行い、かなりエイリアンズを意識した(!?)曲になっております
※実際に高樹さんはエイリアンズのヒットを受け、バラード曲の方が需要があるのかと思いこんだそうです笑
それでは早速歌詞を見ていきましょう。
交わしたはずのない 約束に縛られ
破り棄(す)てようとすれば
うしろめたくなるのはなぜだ
ここでは早速主人公の悩みが吐露されていますね。かなり解釈に悩みましたが、私としては交わしたはずのない約束とは、出産のことを指していると思われます。
つまり、
この世に生まれた事を悔やみ、約束を破る=自殺を示唆している
という事だと個人的に考えました。かなり極限の状態ですね。
手巻きの腕時計で 永遠は計れない
虚しさを感じても
手放せない理由(わけ)がこの胸にある
手巻きの腕時計で永遠は計れない=永遠の命ではない
下の2行ではなにか大切な人を想っているようにも感じますね。
そしてサビです。
たとえ鬱が夜更けに目覚めて
獣(けだもの)のように 襲いかかろうとも
祈りをカラスが引き裂いて
流れ弾の雨が 降り注ごうとも
この街の空の下(もと) あなたがいるかぎり僕は逃げない
…難しい…さすが早稲田文学部卒…
そして「祈り」というのは何を指すのかはよく分かりませんが、どんな苦しみや災難が自分の身に降りかかっても、「あなた」がいる限り僕は逃げない…
強いです。大切な人を持つことは大事ですね。
そして二番に移ります。
人形の家には 人間は棲めない
流氷のような街で
追いかけてたのは 逃げ水
ゴーストハウス?のようですが、恐らく現代の都市、他人との距離感が広く、まるで人形のように無言の人々が行き交う街のことを指しているのではないのでしょうか。
そして逃げ水にたとえられているのは、「大切な人」でしょうか。
つまり大切な人は決して親密な関係ではなく、高嶺の花のように手に届かない存在なのでしょうか。
いろんな人がいて いろんなことを言うよ
「お金がすべてだぜ」と言い切れたなら
きっと迷いも失せる
主人公は決してお金では買えない形にできないもの、今回で言えば愛、について深く迷いを抱えているようです。
みんな愛の歌に背突かれて
与えるより多く奪ってしまうんだ
乾いた風が吹き荒れて
田園の風景を砂漠にしたなら
照りつける空の下
あなたはこの僕の傍にいるだろうか?
この歌詞、本当に素晴らしいと思います。世の中に存在するラブソングに疑問を投げかけているようですね。「愛してる」だとか、「君を離さない」だとか、そんな曲ばかりが世の中に溢れ、そして愛よりも執着心や嫉妬が先行し、与えるよりも多く失うものが増えると。まさにその通り。
そして4行目から。一番のサビでは自分の固い意志を歌いましたが、二番では
果たして相手はどんなことがあっても自分を愛してくれるのだろうか?
そんな不安を歌っています。
僕はきっとシラフな奴でいたいんだ
子供の泣く声が踊り場に響く夜
冷蔵庫のドアを開いて
ボトルの水飲んで 誓いをたてるよ
欲望が渦を巻く海原さえ
ムーンリヴァーを渡るようなステップで
踏み越えてゆこう あなたと
この僕の傍にいるだろう?
この雰囲気、最高じゃないですか?
ここまで風景が頭の中に浮かぶ歌詞は普通作れませんよ…
タイトルの通り、彼は夜に放浪(Drift)しているのでしょう。ボトルの水とありますが、きっと酒でしょう。酒に酔い街を徘徊する、そんな男が浮かびます。
ムーンリヴァーですが、こちらは「ティファニーで朝食を」の主題歌である「Moon River」からの引用でしょう。その証拠にこの曲の歌詞の中にも"Two Drifters"が出てきます。
この映画の主人公の女性は様々な男性と交際を繰り返しています。玉の輿狙いでしょうか。よって交際している男性は全てお金持ちの人たちでしょう。つまり
「お金がすべてだぜ」
というのはこういった金持ちの言葉であると考えれば、Drifterの主人公が狙う女性も同じ境遇にある人なのかもしれません。
「貧しい自分は届きやしない。でも、絶対に自分のそばにいてほしい。」
男はそんな様子で彼女を見つめているのでしょう。
さて、この曲について簡単に考察をしてみました。
この曲には「君が好き」だとか、「愛してる」だとか、そんなありふれた愛の言葉が一切含まれていないのに非常に強いメッセージ性を感じます。
ちなみにこの曲はかMr.Childrenのボーカルである櫻井さんもBank Band名義でカバーしています。
こちらはちょっと熱めなDrifterに仕上がっております。
もう駄目だ、と思ったとき、きっとこの曲があなたに寄り添ってくれるでしょう。
それではまた。